「ポップス大作戦」 武田花

 今、私はあの世から、この世に戻って来たところだ。そして、この世の景色を眺めているのだ。私は幽霊。だから、なんだかふわふわした、浮かんでいるみたいな気持ちなのだ。
 妙に景色がはっきりくっきり見える。はじめて見る場所なのに、ちょっとだけ懐かしい。ここには誰も私を知っている人はいない。私が見えていないかもしれない。
 知らない町を歩いていると、ふいに、そうおもうことがある。

武田花さんもとうとうカラー写真を撮るようになったのかと本書を眺めてて思った。「アサヒカメラ」が休刊になり、オリンパスは映像事業を売却すると発表した。女性誌の「Scawaii」がいつの間にか季刊になっていて、紙媒体の雑誌が消滅する日も近い。銀塩写真はフィルムや印画紙の種類が極端に減って昔のような表現が出来なくなってきている。そのような状況で、武田花さんがカラー写真を撮るのも不思議ではないけれど、今までのイメージと異なり管理人なんかは戸惑っている。文章のほうは相変わらずで安心した。それにしても、武田花さんは摩訶不思議なひとと会うことが多いのはなぜだろう。あやしい場所へ入りこむ所為なのだろうか気になる。

 「私って、いつも同じだ」
 およそ二年前。町を歩いている時、ふいに自分に飽きた。すぐに帰宅して布団をひっ被り、ふて寝。二、三日後に決めたのだ。カラー写真をやってみよう。
 始めてみたら、びっくり。両の目玉を取り外し、カラー用目玉をパッカンと嵌め込んだよう。この世に氾濫する色という色が、目に飛び込んでくる。
 モノクロ写真ばかり撮っていた私にとっては一大事。大作戦が始まったのだ。
 ♪時はゆくゆく、乙女は婆あに。それでも時がゆくならば、婆あは乙女になるかしら・・・♪ 唐十郎さんのお芝居に、こんな歌があったが。婆あの私はカラーのお陰で乙女になりました。現在、弱冠一二歳(のつもり)。

関連記事