「おひとりさまの老後」上野千鶴子

本の話

十数年前にベストセラーとなった本書を今頃なぜ読んだのかというと川村湊さんの「ホスピス病棟の夏」に参考図書として紹介されていたため。介護はまだ関係ないと思っていたところ、緩和ケアに母親がかかり、姉も病気が重なり介護が必要になってしまった。そうなると残った独身の自分は「おひとりさまの老後」が待っている。今後訪れるだろう「おひとりさまの老後」に備えるために本書を読んでみた。

本書を読んだのは、殆どが病院の待合室だった。母や姉の付き添いで病院へ行くことが多く、大きな病院は予約していても待たされる時間が長い。本書は女性のおひとりさまを対象としているので、男性には参考にならないことが多い。著者は大学の先生で、友達ネットワークがとても広く、本書を書いた頃は介護とは縁の無い生活で、「おひとりさまの老後」に対する切実感があまり感じられない。それでも体験者の話は参考になることが多かった。

介護を受ける側と親族ではない介護者との距離感はどうするか。実際に介護を受けるときにならないとよくわからないところが多い。他人に「下の世話」を任せるのは嫌なものらしい。母は夜中自力でトイレへ行こうとして転んでしまい骨折した。母はオムツも簡易トイレも嫌がり使わなかった。自分でできないのだから他人に任せるしかないということを受け入れるのに時間がかかると思う。自分は年寄りなのだからしかたがないと割りきれるようになるのだろうか。ということで同じ著者の「男おひとりさま道」を読み始めている。

 自然は孤独の最大の友である。ひとりでいることがまったく苦にならないのは、自然のなかにいて、自分がどれほどちっぽけかを実感しているとき。わたしは若いときから山行したり、キャンプしたりというアウトドア系の楽しみをもっているが、こういう楽しみを10代のわたしに教えてくれた兄に感謝している。
おかげで、いまでもスキー、スキューバダイビングと自然のなかでの楽しみにはことかかない。朝まだ暗いうちから、ウェアだ、ゴーグルだと完全装備を身につけて、寒さに震えながらスキー場に出かけ、「難儀な遊びやなあ」とぶつぶつ言いながらスキーをはいて雪原に立ったときの、あのおなかの底からわきあがるような純粋な喜び。自然に笑いがこみあげてきて、自分がにんまりしていることがわかる。どんなストレスもふっとんでいく。
アウトドアの楽しみの理由のひとつは、わたしを受けいれてくれる大自然があること。もっと正確にいえば、人間を受けいれるでも受けいれないでもなく、ただ自然がそこにある、という圧倒的な事実に接することだ。自然のほうでは、人間がいようがといまいと関係がない。2500mを超す山岳地は、人間の生活を拒絶するきびしさをもっている。登山者は、山のごきげんをうかがいながら、その魅力の片鱗をかすめさせてもらうにすぎない。高山のお花畑は美しいが、なにもわたしたちのために咲いているわけではない。わたしが行こうと行くまいと、お花畑は氷河時代から咲きつづけているし、わたしが死んでも咲きつづけるだろう。それがいま自分の目の前にある、という奇跡。


著者 : 上野千鶴子
出版社 : 法研
発売日 : 2007/7/12
単行本 : 264頁
定価 : 本体1400円+税

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