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「どこからお話しましょうか」 柳家小三治

管理人は落語ファンではないし、小三治師匠のファンというのでもない。それでも小三治師匠の自伝ならきっと面白いと思い本書を購入。本書はインタビューをまとめたもので、読みやすくやはり面白かった。中学・高校生時代の初恋の話は、今では何とももどかしい感じがするが、その当時では当たり前なことだったのだろう。北海道との関係も初めて知った。北海道をバイクでツーリングしたり、スキーをしたりと噺家としての印象とは随分違って活動的だ。

本書にある落語の芸の話は素人には難しい。落語家さんなら腑に落ちるのかもしれない。落語は同じ噺をいろいろな噺家が演じる。この噺はあの落語家が良いが、この落語家のは面白くないという評価はどのような基準でなされるか。談志師匠について、「家元になりたいとか議員になりたいとかっていう、つまらない希望なんか持たなければ『家元・元祖』って言われるようなものに、知らずのうちになれるよな人だった」と述べている。

「週刊FM」で、森山良子さんと対談するとき、小三治師匠は編集者から「どうしてあんなに歌をうまく歌っちゃうんですか」と聞いてくれないかと言われる。当時なぜそのような質問をするのか、その意味が小三治師匠はわからなかった。その後、だんだんわかるようになったという。歌はうまく歌っちゃいけない。感じた通り素直に歌えばいい。それは文筆であれ、絵であれ、役者でも同じだと小三治師匠は述べている。

 うまくやろうとしないこと。それが、難しい。とても難しい。じゃあ、下手なまんまでいいのかっていうと、そうじゃないんだよねえ(笑)。心を理解しなきゃ、人の心を理解しなきゃ。人が生きるっていうのはどういうことか。それをどうやって理解していくかっていうと、音楽を聞き、絵を見、小説を読み、人の話を聞き、芝居を見、もちろん映画も見て、つまり、自分以外のものから発見していく。なにを発見していくかっていうと、自分を発見していくんですね。そういう鏡に照らし合わせて、ええっ、おれってこんななの?って。その映す鏡は他人じゃない。自分の中にある自分の鏡だ。難しいよ。いつかそういう鏡を持てる自分になれるだろうか。いや、なれるわけない。そんな毎日ですから、これでいいんじゃないかって思える日が来たら、どんなに幸せかと思ったりします。でもこんな考え方で生きている以上はならないね。私の心に平和が来ない。いいんです。平和じゃなくて。平和が嫌いで、大学蹴ったんですから。

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