「ドリアン・グレイの肖像」 オスカー・ワイルド

本の話

管理人が読んだオスカー・ワイルドの作品は、バベルの図書館「オスカー・ワイルド」だけで、今回岩波文庫から「ドリアン・グレイの肖像」がでたので読んでみた。巻末の解説によれば、「ドリアン・グレイの肖像」が後期ヴィクトリア朝を代表するゴシック小説として評価が上がってきたのはここ20~30年だそうだ。

画家のモデルとなったドリアン・グレイは肖像画が年を取り、自分の美貌が変わらないことを願った。気まぐれで女優と婚約し、直ぐにそれを破棄し、それを知った女優が自殺をした時、肖像画に醜い皺が増えたのをドリアン・グレイが発見して驚愕する。自分の願いがかなったことを知る。それから18年経っても、ドリアン・グレイの美貌は変わらなかった。18年間の悪行というのは抽象的に描かれ、具体的に何をしたのか明確ではない。肖像画のドリアン・グレイは醜く悍ましい中年男になってしまう。隠して誰にも見せなかった肖像画を画家が見て驚く。その時、ドリアン・グレイはどうしようもない憎しみから画家を殺してしまう。

雑誌版だとこの後直ぐにドリアン・グレイが肖像画を切り裂こうとして自分が死んで終わりとなる。改訂版は、死体の処理を友人に行わせ、画家の荷物を焼却する。阿片窟で偶然自殺した女優の弟に出くわすが、まだ10代のようなドリアン・グレイの容貌を見た弟は自分の敵とは別人と思ってしまう。その弟は狩猟場で間違って撃たれ死んでしまう。死体の処理を行った友人は自殺する。心の重荷がなくなったドリアン・グレイは、肖像画だけが気がかりだった。ドリアン・グレイは自分の過去を殺そうとして、肖像画にナイフを突き刺した。死んだのはドリアン・グレイ本人で、肖像画は描かれた当時に戻った。

前半のヘンリー卿の長い話はちょっとついていけずに挫折しそうになったが、後半は一気呵成に読んだ。悪魔に魂を売り渡し、永遠の若さを手に入れる話はゲーテの「ファウスト」等々幾多もある。「ドリアン・グレイの肖像」では悪魔そのものは登場しない。ドリアン・グレイが悪魔と言えば悪魔なのかもしれない。雑誌版の結末のほうがわかりやすいように思うが、オスカー・ワイルドは章を書き加えて今のかたちにしている。当時のイギリスでは、同性愛は犯罪であり、オスカー・ワイルドはそのために下獄している。同性愛を思わせるような表現は極力削られて、管理人には何だかよく分からないところがあった。久しぶりに19世紀の小説を読んで、小説の面白さが蘇ってきた。

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