「ヒトラーの時代」 池内紀

本の話

本書はネット上でドイツ現代史専門家から事実誤認や誤記が指摘され大炎上したそうだ。管理人はそのことを知らずに本書を読んだ。もともと専門家ではない著者が書いたものなので、エッセイとして読んだ。それでも管理人が分かるような誤りがあったり、内容の重複が多く何かおかしい感じがした。

ウェブで連載していた文章を纏めた本なので明かな誤記などは校閲で訂正されるだろうと思ってしまう。ところがこれだけ誤記が多いとなると、著者が校閲を拒否したのではないかという疑いがある。あるブログを読んでいたら、編集者の話として池内紀さんは明かな間違いでも原稿の修正・変更を認めないということが書かれていた。池内さんは自身で語っているように、インターネットは使わず、PCもスマホもTVも持っていない。原稿は万年筆で書く。ある翻訳でチャットがチャートになっていて、チャットとは何かを知らなかったようだ。

SNS上の炎上について、ご子息の池内恵さんのtwitterを読んだら、昨年の夏に池内紀さんが体調を崩してからめっきり老け込んだそうだ。そのため推敲・校正が十分に出来なくなったと。それ以外に父・池内紀について様々のことが書かれており考えさせられた。本書のあとがきには「自分の能力の有効期間が尽きかけている」と書いてあった。ご自身にも自覚があったと思われる。ご子息は「あの人の本は若い人は読まんでいい」と言っているそうだ。また「本を書くことが生活の大部分である(そのために大学もやめた)父にとって、どんなに衰えても本を書くことをやめる日はこないのかもしれません」と書いている。人生の締めくくりかたというのは難しい。「ヒトラーの時代」の内容とは関係ない話になってしまった。

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