「石を聴く」 ヘイデン・ヘレーラ

本書は2段組で本文約500頁。札幌ジュンク堂で本書を探してなかなか見つからず、やっと美術の北海道関連のところで発見。イサム・ノグチが北海道関連のところにあるとは思わなかった。モエレ沼公園があのような空間というか構造になっているのが以前から不思議な感じがしていた。今までイサム・ノグチについて何も知らなかったので本書を購入した。とにかく知らない事ばかりで、一番驚いたのが山口淑子と結婚していたこと。それ以外でもノグチのもとには様々な女性が現れる。アーティストはやっぱりモテるなあと感心してしまった。

ノグチが設計する公園の候補地としては、札幌市立大学建設予定地、芸術の森があったらしい。ノグチは市立大学は樹木が多く、芸術の手を加える必要性がないと考えた。また、芸術の森は「彫刻の墓場みたいだ」と言った。当時モエレ沼は廃棄物処理場で三方を川で囲まれていた。ノグチはここを巨大な彫刻にしたいと考えた。1933年に拒否されたプロジェクト『プレイマウンテン』『鋤のモニュメント』を人生の最後に実現することになった。本書を読んで「モエレ沼公園の謎」が分かったような気がした。

 ノグチはどちらの方向も見ていた。ノグチにとって時間は前にも後ろにも流れていた。原点に回帰することを切望していた。「ぼくは物事の最初におけるように、もう一度地平線を見たい」。だが、時の流れはけっして停止せず、ノグチを悩ませた。十九六十四年に「ぼくはまだ、時と折り合いをつけていない気がする」と語っている。自伝には「そしてときどき、ぼくが永続的な価値をもつように見える作品をつくったとしても、それらもまた紙銭のように時の災厄を撃退するためのサインなのだ」と書いた。人生の短さについてのノグチの不安は、東と西に引き裂かれていることの不安と同様にノグチを創造に駆り立てた。それを石で具体化することによって、あるいは歩行する鑑賞者が時間を通って移動する庭園をつくることで自分の彫刻内部に時間を包みこむ必要があった。なにか美しくて持続するものを創造することによって時間を超越したかった。だが、時の流れとともにゆくことを望み、自分の作品が時を経ながら変化し、大地にもどることを許した。ノグチがしばしば口にしたように、私たちはみんな大地に帰らなければならない。石はノグチが時に挑戦し、時に従うために選んだ武器だった。「石は自然の時の循環に合わせて呼吸する。それはエントロピーに逆らわない。だが、エントロピーのなかにある。石はきみを通過して継続し、さらに進んでいく。石で仕事をするのは時に逆らうことではない。だが、時に触れることだ」。ノグチの心のなかで、石の彫刻は永遠に続いていく変化への一時的な侵入にすぎなかった。「ぼくがするのは自然の時間のなかにさまざまな時間の要素を侵入させることだけだ」。

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