「スノーデン 日本への警告」 エドワード・スノーデン他

本の話

本書は、2016年6月4日に東大で行われたシンポジウム「監視の”今”を考える」をまとめたもの。第一章はエドワード・スノーデンがネットから参加した質疑応答の記録、第二章は4人のパネリストによるディスカッションの記録、最後にスノーデンの法律アドバイザーであるベン・ワイズナーのインタビューが掲載されている。シンポジウムの記録なら、副題にでも書いておけばよいのにと思った。書名だけみるとスノーデンが日本向けに書いた本かと思ってしまう。

スノーデンによる内部告発は、最初のインパクトが強かったけれども、今の日本では何事もなかったような雰囲気がある。日本において、政府や企業による情報収集における透明性を保つ法律や第三者の監視機関の設置などはまだ決定されていない。というか逆に監視を認めるような法律ができている。ジャーナリストやメディアによる権力の監視というのも日本では皆無に近い。ビッグデータの取り扱いも不透明なままだ。本書で述べられているように、何よりも人々の無関心が一番問題となる。自由を享受できる社会は市民が主役になって初めて実現されるとスノーデンは述べている。

 第一に関心を抱いて下さい。シンプルに聞こえるかもしれません。しかしプライバシーとは何かを隠すことではありません。守ることです。開かれた社会の自由を守ることです。立ち上がり自分の権利を守らなければ、そして政府が適切に運営されるよう努力しなければ、権力の腐敗が起こります。
市民が反対しているのに政府が意に介さず法律を成立させるような社会では、政府は制御不能となります。あらゆることのコントロールが失われます。人々は政府と対等のパートナーではなくなります。全体主義にならない保証はありません。
私たちはみな、自分たちの子どもを自分たちが引き継いだ社会より自由でリベラルな素晴らしい社会に住まわせたいと願っています。それを実現させる唯一の方法は、常に目を光らせ続けることです。常に民主主義にかかわり続ける必要があります。監視の問題のみならず、自分にとって重要なことについてもかかわり続けなければなりません。
ネガティブな面を見るだけでもいけません。もちろん政府が悪いことをした時には責任を取らせなくてはなりませんが、非難するだけではなく、良いことを評価すること、そしてさらに重要なことは具体的にこういうことをやってほしいと訴えることです。前向きな社会のヴィジョンを持って下さい。

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