「本と怠け者」 荻原魚雷

本書は雑誌「ちくま」に「魚雷の眼」というタイトルの連載した文章に、ブログ「文壇高円寺」に発表した文章と書き下ろし文章を加えた文庫オリジナル。著者として長めの文章が多い。「魚雷の眼」というタイトルは「ひとつのテーマに狙いを定め、命がけでぶつかり、燃え尽きるラスト・ライヴのような覚悟で挑んでほしい」という担当者のおもいがあったのかもしれないと著者は述べている。

本書でも様々な本が取り上げてられているが、不思議と管理人が読んだことのある本がすくない。遠藤周作、吉行淳之介、安岡章太郎はそこそこ読んだけれども、尾崎一雄や梅崎春生は読んだことがなかった。本書を読了後、尾崎一雄の著作を読んでみようかとアマゾンで調べてみたら、新刊として入手できるのは講談社文芸文庫「美しい墓地からの眺め」のみ。岩波文庫の「暢気眼鏡・虫のいろいろ―他十三篇」は絶版状態で、中古で何千円もするものがあった。 ということで、尾崎一雄の著作を読むのは先送りすることにした。

「限度の自覚」「精神の緊張度」「批評のこと」は著者には珍しい?文学評論。評論は自分の好きな作家だけを読んで成り立つことはない。学者ではないので系統立てて本を読まないし、理解できないものも読まないという著者の姿勢は評論を書くときの弱みになっていると思う。著者の文章では好きな作家の本について語るエッセイが面白いと思うのだが。

以下はあとがきからの引用。

 この連載中、わたしは「斜陽の時代をどう生きていけばいいのか」ということをよく考えていた。
 根拠のない直感をいわせてもらうと、経済成長の時代に美徳とされていたものは、すべてとはいわないが、悪徳もしくは無価値になってしまうのではないかという気がしている。たとえば、勤勉というのは、これまでは立派なことだとおもわれていたが、今のような社会では他の人の仕事を減らし、残り少ない資源を消耗させてしまうことにもなりかねない。逆に、漂えど沈まずの持続可能な生活が注目され、小学生のなりたい職業の第一位が「隠居」というような時代が来てもおかしくない。
 散歩がてらに古本屋をまわり、喫茶店で休憩し、近所の飲み屋でウイスキーの水割を飲みながら、古今東西のごく一部の書物の中から、そんな時代を生きぬくためのヒントを探した。
 今も探している。

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