現実世界はなぜこれほど複雑なのか - 南部陽一郎さんが死去

日誌

 素粒子理論の世界的権威で、「自発的対称性の破れ」の発見で2008年にノーベル物理学賞を受賞した米シカゴ大名誉教授の南部陽一郎(なんぶ・よういちろう)さんが7月5日、急性心筋梗塞(こうそく)のため死去した。94歳だった。葬儀は近親者で営んだ。お別れの会などの開催は未定。

1921年、東京生まれ。42年に東京帝国大(現東京大)理学部物理学科を卒業。52年、朝永振一郎氏(故人、65年ノーベル物理学賞)の推薦で米プリンストン高等研究所に留学した。58年にシカゴ大教授、70年に米国籍を取得した。91年からシカゴ大名誉教授。2011年に大阪大特別栄誉教授となった。(毎日新聞webより)

 

管理人は大学では素粒子理論を専攻しており、「強い相互作用」分野の論文で何度もY.Nambuの名前を目にして、まさに雲の上のひとでした。なぜ南部先生がノーベル賞を受賞していないのか不思議でした。2008年になりやっとノーベル物理学賞を受賞されて、ああ間に合ってよかったというのが正直な感想でした。南部先生ならノーベル賞を取らなくても、「自発的対称性の破れ」「量子色力学」「ひも理論」等々の業績に対する評価は変わらなかったと思います。

「ひも理論」は重力場の「超弦理論」へ発展してきました。管理人のいた研究室は先輩に米谷さんがいたせいか、重力場の量子化を研究する院生がいて、学部生の部屋にきては、管理人にはわからない話をしていました。南部先生はノーベル賞受賞記念講演で次のように述べています。

物理学の基本法則は多くの対称性を持っているのに現実世界はなぜこれほど複雑なのか。対称性の自発的破れの原理は、これを理解するための鍵となっています。基本法則は単純ですが、世界は退屈ではない。なんと理想的な組合せではありませんか。

ご冥福をお祈りいたします。

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