評論や児童文学など、幅広いジャンルで活躍した、詩人の長田弘(おさだ・ひろし)さんが3日午後3時25分、胆管がんのため東京都杉並区の自宅で死去した。75歳。福島市出身。葬儀・告別式は近親者で行った。喪主は長男敦(あつし)氏。(毎日新聞webより)
読売新聞「こどもの詩」の選者が代わるという記事に掲載された長田弘さんの写真は、以前の面影が殆ど見られないほど痩せていて驚いた。病気が重篤化しているかもしれないと思っていた矢先に長田弘さんの訃報を知った。
長田弘さんの本で最初に読んだのは中公新書版「私の二十世紀書店」だった。それ以来、長田弘さんのエッセイ・評論は出版されるとすぐ購入して読んできた。何度も繰り返して読んだ本もあった。長田弘さんの詩集は持っていたが、ちゃんと読んだことが無かった。これからゆっくり読もうと思う。
好きな書き手がまたひとり亡くなってしまった。ご冥福をお祈りいたします。
「イツカ向コウデ」
人生は長いと、ずっと思っていた。
間違っていた。おどろくほど短かった。
きみは、そのことに気づいていたか?
なせばなるとずっと思っていた。
間違っていた。なしとげたものなんかない。
きみは、そのことに気づいていたか?
わかってくれるはずと、思っていた。
間違っていた。誰も何もわかってくれない。
きみは、そのことに気づいていたか?
ほんとうは、新しい定義が必要だったのだ。
生きること、楽しむこと、そして歳をとることの。
きみは、そのことに気づいていたか?
まっすぐに生きるべきだと、思っていた。
間違っていた。ひとは曲がった木のように生きる。
きみは、そのことに気づいていたか?
サヨウナラ、友ヨ、イツカ、向コウデ会オウ。
(長田弘詩集「死者の贈り物」より)