2015年3月11日
友へ 高木仁三郎からの最後のメッセージ
皆さん、ほんとうに長いことありがとうございました。体制内のごく標準的な一科学者として一生を終わっても何の不思議もない人間を、多くの方たちが暖かい手を差し伸べて鍛え直してくれました。それによって、とにかくも、「反原発の市民科学者」としての一生を貫徹することができました。
反原発に生きることは、苦しいこともありましたが、全国・全世界に真摯に生きる人々と共にあることと、歴史の大道に沿って歩んでいることの確信からくる喜びは、小さな困難などをはるかに超えるものとして、いつも私を前に向って進めてくれました。幸いにして私は「ライト・ライブリフッド賞」をはじめ、いくつかの賞にめぐまれることになりましたが、それは繰り返し言って来たように、多くの志を共にする人たちと分かち合うべきものとしての受賞でした。
残念ながら、原子力最後の日は見ることができず、私の方が先に逝かねばならなくなりましたが、せめて「プルトニウム最後の日」くらいは、目にしたかったです。でも、それはもう時間の問題でしょう。すでにあらゆる事実が、私たちの主張が正しかったことを示しています。なお、楽観できないのは、この末期症状の中で、巨大な事故や不正が原子力の世界を襲う危険でしょう。JCO事故からロシア原潜事故までのこの一年間を考えるとき、原子力時代の末期症状による大事故の危険と結局は放射性廃棄物がたれ流しになっていくのではないかということに対する危惧の念は、今、先に逝ってしまう人間の心を最も悩ますものです。後に残る人々が、歴史を見通す透徹した知力と、大胆に現実に立ち向かう活発な行動力をもって、一刻も早く原子力の時代にピリオドをつけ、その賢明な終局に英知を結集されることを願ってやみません。私はどこかで、必ず、その皆さまの活動を見守っていることでしょう。
- 高木仁三郎(2000年10月8日歿) 『原発事故はなぜくりかえすのか』より-
2012年2月28日
東京大学 大橋弘忠プルサーマルに関して、これまで週刊誌で取り上げられ、ネットでも話題になっていることから、先輩後輩、同僚、友人、教え子、研究室学生などの方々に参照いただくため、ここに経緯をまとめておきたい。
1.プルサーマル公開討論会の本質
2005年12月に佐賀県主催で行われた討論会に登壇した。議事の様子は佐賀県のホームページで公開されている。
この討論会は、原子力の是非そのものではなく、プルサーマルを実施するにあたって安全上の問題がないかどうかを問うもの。私からは、安全確保の考え方を踏まえてプルサーマルは普通の燃料を使う場合と比べて同じ安全余裕をもっていることを説明した。
客観的に見て、プルサーマルに安全上の課題はない。技術的な問題点を追及するのは難しいだろう。これもあってか、反対派からは、水蒸気爆発が起こるのではないか、プルトニウムは1グラムで100万人が死ぬ、といった反原子力の一般的なプロパガンダが提示された。
2.説明責任
推進派であろうと反対派であろうと、何か技術的なことがらを主張する際には、その根拠やそう思う理由を説明することが必要だ。それで、水蒸気爆発が起こるという根拠は何か、プルトニウム1グラムで100万人が死ぬと思う根拠は何かを聞いた。
水蒸気爆発については、根拠がないということだった。ちなみに、水蒸気爆発が起こるためには、溶けた金属が細かく分散してエネルギーをその場で静かに蓄える状態が不可欠。原子炉事故の場合には水蒸気爆発は起こらないと考えられている。
プルトニウム1グラムで100万人については、単に理念的な話をしているだけで、現実には起こり得ないこと、プルトニウムが水に溶けにくいことなどを指摘した。これもちなみに、米国でプルトニウムを誤って吸引した事故があり、また核実験で大量のプルトニウムが大気に放出されているにもかかわらず、これまでプルトニウムで死亡したという症例は確認されていない。
3.プルトニウムは飲めるか
プルトニウムは水に溶けにくいので、仮に人体に入っても外へ出ていく、と述べたのが、それならプルトニウムは飲めるのか、飲んでみろ、となっているらしい。文脈を考えればわかるのに、いまどき小学生でもこんな議論はしないだろう。
4.話し方について
上のような経緯で、反対派の識者を追及し、追い詰めているように思われるのだろう。不遜だとか話し方が気に食わないという指摘を受ける。イデオロギーにあふれた原子力反対の立場からみれば、そういう強いバイアスで見ているからだと思う。受け取り方なのでどうしようもない。
ただ、自分のイデオロギーのみに基づいて、それに合うか合わないかだけで、これは正しい、あれは間違いという単純なスタンスは、何なのだろう。
5.「やらせ」事件
この討論会について、九州電力のいわゆる「やらせ」が問題となった。私は、佐賀県から依頼されて登壇したもので、話す内容や質疑などについて九州電力からの連絡は一切なかった。
客観的にみれば、この種の討論会は、推進派も反対派も動員をしてそれぞれの立場から質疑を行うのは当然であり、違和感はない。国会答弁でも何でも同じだろう。目立ちたがり屋の弁護士さんが「やらせやらせ」と言い出し、それに社会全体が翻弄されただけではないだろうか。
6.マスコミ報道
この件に関しては、マスコミからの取材をすべてお断りしている。回答したことはない。技術的にわからなければ聞きに来れば良いのに、こちらへの連絡からしてそもそも、原子力反対の立場で問いを投げかけてくるものが多い。おそらく記事構成もすでに決まっているのだろう。
まったく面識のないある週刊誌記者は、いきなりメールを送りつけてきて、その日の何時までに文書で回答せよとのことだった。一体何様なのか。
東京大学工学系研究科システム創成学専攻教授 大橋弘忠
2005年12月25日、佐賀県主催で開かれた玄海原子力発電所3号機プルサーマル計画についての公開討論会における発言事故の時どうなるかと言うのは想定したシナリオに全部依存します。全部壊れて全部出て全部が環境に放出されるとなれば、どんな結果でも出せます。それは大隕石が落ちてきたらどうなるかと、そういう起きもしない確率についてやっているわけですね。
あの~、みなさんは原子炉で事故が起きたら大変だと思っているかもしれませんけれど、専門家になればなるほど格納容器が壊れるなど思えないですね。どういう現象で何がなったらどうなるんだと、それを反対派の方はいや分からないでしょうと、水蒸気爆発が起こるわけはないと専門家はみんな言ってますし僕もそう思うんですけれども、じゃあ何で起きないと言えるんだと、そんな理屈になっていっちゃうわけです。
ですから今、安全審査でやってるのは、技術的に考えられる限りですね、ここがこうなってこうなって、ここは壊れてプルトニウムがこう出てきて、ここで止められて、それでも尚且つという仮定を設けた上で、さらにそれよりも過大な放射能が放出された場合の前提をおいて計算しているわけです。
ここが一番難しいところですけれども、われわれはそういうのはよく分かります。被害範囲を想定するためにこういうことが起きると想定をして解析をするわけです。ところが一般の方はどうしてもいやそういうことがじゃあ起きるんだと、また反対の方が、ほらみろそういうことが起きるからそういう想定をするんだというように、逆方向にとられるからおそらく議論が噛み合わないんだと思います。
もう一つはプルトニウムの毒性です。プルトニウムの毒性というのは非常に誇張されてとらえられています。プルトニウムの健康被害を扱う専門家の方は社会的毒性というふうに呼んでいます。実際にはなんにも怖いことはありません。仮に大げさな話をしてプルトニウムをテロリストがとっていって、貯水池に投げ込んだと、そこから水道が供給されていると、じゃあ何万人が死ぬかというとそんなことはありません。一人も死なないというふうに言われています。
プルトニウムは水にも溶けませんし、仮に体内に水として飲んで入っても、すぐに排出されてしまいますから、そら小出さんが言ってるようなことが起きるのは、まったく仮想的にプルトニウムのつぶつぶを一個一個取り出して、皆さんの肺を切開手術して、肺の奥深くのもう出て来ないところに一つずつ埋め込んでいったらそれぐらい死にますよいう、まったく起きもしないような仮想について言っているわけですね。
ですからそんなことをやっていたら、皆さん自動車にも乗れないし、電車にも乗れない、何が起こるか分からないですよという話しとまったく同じです。
1 福島第一原発及び同第二原発の今回の事故は、原発の設計条件においては考えられていない想定外の過酷事故であり、極めて深刻な事態が続いています。
2 この影響を避けるためには、原発から距離を置くのが最も有効な手段です。可能であれば、福島原発から、できるだけ遠くへ離れることがベストです。移動できない方は、建物の中に入って、外気に極力触れないでください。雨には絶対に当たらないように気をつけてください。
3 「何キロまで離れれば安全か」について判断することは容易ではありません。この判断のためには、放射能レベルと気象条件についての正確な情報が必要であり、さらに、今後何が起こりうるかについての的確な予測が必要だからです。これまでの政府・東京電力の情報提供は極めて不十分であり、この判断のために必要な情報を、正確かつ迅速に提供するべきです。
4 現時点で、私たちが把握している事実は以下のとおりです。
(1) 福島第一原発2号機は、核燃料の冷却能力が十分でなく、核燃料が長時間にわたって露出している状態です。格納容器からは、数日前から、圧力を低下させるため、放射性物質を含む蒸気を放出しており、加えて、放射性物質を閉じ込める最後の砦である格納容器の一部である圧力抑制室(サプレッションプール)が一部損傷を受けたため、これによって、さらに放射性物質が放出されています。今後も、炉水位の低下及び格納容器の損傷によって、さらに多量の放射性物質が放出される可能性があります。(2) 福島第一原発1号機及び3号機でも、核燃料の冷却能力が十分でなく、格納容器からは、数日前から、圧力を低下させるため、放射性物質を含む蒸気が放出されております。現在、海水注入がされていますが、2号機と同様の事態に至る可能性があります。
(3) 福島第一原発4号機~6号機は、地震時には定期点検中で運転されていなかったにもかかわらず、同4号機では使用済み核燃料プールが水位低下したことによって水素爆発が発生したとされています。この事実は、4号機~6号機の安全も、絶対のものではないことを示しています。
(4) 福島第二原発1号機~4号機も、冷却能力の不足が懸念されていました。東京電力の発表では、4基とも冷温停止(100℃以下)で外部電源も確保されているとのことでありますが、一部温度が上昇したとの発表もあります。今後も長期間継続して冷却しなければならず、注意深く監視していく必要があります。
(5) 福島第一原発は6基の、同第二原発は4基の原発が隣接しており、1基の原発に発生した事故が、他の原発に影響を及ぼす可能性が高く、今後、事態がさらにより深刻なものになる可能性もあります。(2011年3月15日)
福島第1原発:2号機で放射線量が最高値…タービン建屋内
経済産業省原子力安全・保安院は23日、東京電力福島第1原発2号機のタービン建屋内で18日午前10時半ごろ、1時間当たり約500ミリシーベルトの放射線量を計測したと発表した。同原発で観測された最高値で、厚生労働省が定めた作業にあたる人の被ばく線量の上限を大きく上回る。2号機の復旧作業の一部が中断している。原因について西山英彦審議官は同日の会見で「分からない」と述べた。
計測したのは2号機の原子炉建屋に隣接するタービン建屋内。東電社員ら2人が点検で近づいたところ、約5分間で50~60ミリシーベルトを計測した。
これまでの最高値は15日に3号機付近の観測計で1時間当たり約400ミリシーベルトだった。年間の累積被ばく線量の上限をめぐっては、厚労省が震災を受け、100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げている。
一方、東電は、同原発敷地正門で11日以降、中性子線が13回検出されていたと発表した。中性子線はウランやプルトニウムが核分裂する際に発生し、エックス線など他の種類の放射線に比べ透過力が強い。線量は毎時0.01~0.02マイクロシーベルトで人体に影響はないが、核燃料の一部が損傷している可能性が高まった。東電はこれまで検出回数を2回と発表していたが、計測器の数値の読み取りを誤ったのが理由と説明した。
「大丈夫?」っていうと、
「大丈夫」っていう。「漏れてない?」っていうと、
「漏れてない」っていう。「安全?」っていうと、
「安全」っていう。そうして、あとでこわくなって、
「でも本当はちょっとやばい?」っていうと、
「やばい」っていう。こだまでしょうか。
いいえ、東京電力です。
照射線量
単位:C/kg(クーロン毎キログラム)
定義:1kgの空気に照射し、1クーロンのイオンを作るX線、ガンマ線量
従来の単位:R(レントゲン)
換算方法:1R=2.58×10-4C/kg吸収線量
単位:Gy(グレイ)
定義:1kg当たり1ジュールのエネルギー吸収があるときの線量 従来の単位:R(レントゲン)
換算方法:1R=2.58×10-4C/kg
*単位としてはグレイ単独よりその100万分の1を意味するマイクログレイ(μGy)、10億分の1を意味するナノグレイ(nGy)が通常よく使われます。照射線量
単位:C/kg(クーロン毎キログラム)
定義:1kgの空気に照射し、1クーロンのイオンを作るX線、ガンマ線量 従来の単位:rad(ラド)
換算方法:1rad=0.01Gy線量当量
単位:Sv(シーベルト)
定義:グレイに線質係数、修正係数をかけたもの
従来の単位:rem(レム)
換算方法:1rem=0.01Sv
*線量当量=吸収線量×線質係数×その他の補正係数
*放射線が生物に及ぼす効果は、放射線の種類やエネルギーによって異なります。単位としては、シーベルト単独よりその1,000分の1を意味するミリシーベルト(mSv)、100万分の1を意味するマイクロシーベルト(μSv)が通常よく使われます。放射性物質から出るアルファ(α)線、ベータ(β)線、ガンマ(γ)線、X線、中性子線などを総称して放射線といいます。
放射線には、原子をイオン化させたり(電離作用)、写真のフィルムを感光させたり(感光作用)、物質を通り抜ける力(透過力)がありますが、これらは放射線の種類によって異なります。
電離作用や感光作用の強いものほど透過力は弱く、例えば、アルファ線は薄い紙1枚でさえぎることができますが、ベータ線はアルミ板、ガンマ線は鋼鉄や厚いコンクリートなどが必要です。
また、放射線を出す能力(放射能)は時間とともに減っていきます。
放射能の減る割合は放射性物質の種類によって違いますが、それぞれ一定の時間で半分になる性質があり、この時間のことを半減期といいます。
飯舘村「避難不要」 保安院が被ばく量試算
東京電力福島第1原発から約40キロ離れた福島県飯舘村で、国際原子力機関(IAEA)が測定した放射線レベルが同機関の避難基準を上回った問題で、経済産業省原子力安全・保安院は31日、独自に放射線による被ばく量を試算した結果、内閣府原子力安全委員会の避難基準の約半分にとどまったことを明らかにした。「直ちに避難する必要はない」としている。
文部科学省の簡易型線量計のデータを基に、震災以降の累積線量を試算した。その結果、同村周辺で最も線量が高い地点の累積線量は50ミリシーベルトだった。これは一日中屋外にいた場合の線量で、日常生活での累積被ばく量はこの半分程度と見ていいという。
原子力安全委の指標では、避難基準は実質的な累積線量が50ミリシーベルト以上。保安院は「一日中屋外で過ごすことは現実的には考えづらく、(水素爆発などが起きた3月中旬に比べて)時間当たりの放射線量も減少傾向にある」と強調した。
原子力安全委は31日の会見で「日本の避難の基準は、大気や空中の浮遊物、飲食物の放射線量など、人体への直接的な影響を判断できる数値で決めている。IAEAは、草の表面のちりの放射能を測定しており、日本の基準の方がより正確な評価ができると考えている」と話した。(2011年3月31日)
『新潮45』2010年6月号
「達人対談」原子力発電の達人 近藤駿介(原子力委員会委員長、東京大学名誉教授) VS.ビートたけし以下、ビートたけしの発言
「相変わらず原子力発電に反対する人もいるけど
交通事故の年間の死者の数を考えて、
自動車に乗るのを止めましょうとは言わない。
やっぱり使ったほうが便利だからね。どうも
原子力発電というとリスクばかり言う傾向が
あるけど、実際、おいらたちはもっとリスクのある社会に
生きている。変質者に刺される確率のほうがよほど高い(笑)」「民主党はCO2を25%削減すると大見得切ってたけれど、
これからどうするつもりなのか。火力発電よりも
圧倒的にCO2排出量が少ない原子力発電を使っていくしかないでしょう」「だったら、原子力発電には頑張ってもらわないといけない。
追い風になるんじゃないですか」「小型原子炉がテレビショッピングで売られる時代が来ないかな。
『今日は特別に、ウランをもう一つお付けして、この値段』
『うわー、安い』とかさ」
原発増設含む計画提出 東電「震災で見直す時間なく」
東京電力が、福島第一原発の事故が起きた後の3月末に国へ提出した電力の「供給計画」に、第一原発に7、8号機を増設する計画を盛り込んだままにし、福島県が反発している。東電福島事務所は「地震の影響で作り直す時間がなかった」と釈明している。
電気事業者は電気事業法に基づき、毎年度末、経済産業省資源エネルギー庁に対して10年間の電力需要を見込んだ供給計画を届け出ることになっている。7、8号機の増設は1995年度に提出した計画で初めて明示。それ以来、計画に盛り込み続けてきた。
同原発には現在1~6号機があり、1~4号機で事故が起きた。福島事務所は、計画が完成したのは震災前で、震災後は見直しをする余裕がなく、そのまま提出したとしている。
福島県側は計画の内容を事前に把握し、「増設は認められない」と東電側に指摘したとしている。県企画調整部の野崎洋一部長は「実際に提出されたのであれば、県民感情として許せない」と話している。(2011年4月2日)
ただちに影響なしと言われても… 放射線と健康、正しく知る低い線量での発がんは確証なく
放射線の健康への影響を理解するのはなかなか難しい。2つのタイプの影響が混在するため、わかりにくい。一定量以上浴びたら必ず身体に症状が出る「確定的な影響」と、何十年もの間にがんになるかもしれない「確率的な影響」を、切り分けて考えなければならない。
・1万ミリシーベルトなら死亡
「ただちに健康に影響が出る数値ではないが、できれば控えたほうがよい」――。東京電力福島第1原子力発電所の事故後、野菜や牛乳、水道水から放射性物質が検出されるたびに聞く。枝野幸男官房長官も記者会見でよく口にする。一見、安心できるようで、そうでもない。「ただち」という言葉がくせもの。うがった見方をすれば、将来は大丈夫なのかという不安もわいてくる。
放射線被曝(ひばく)の影響の一つである「確定的影響」は、一度に高い線量の放射線を浴びた場合に起きる。放射線量がある値(しきい値)を超えると、急性か、もしくは少し時間がたってから、確実に健康を害す。
例えば、全身に500ミリシーベルト浴びると、血液中のリンパ球が一時的に減る。1000ミリシーベルト(1シーベルト)以上だと、脱力感などの自覚症状が出始める。
7000~1万ミリシーベルトで中枢神経などがやられて、死亡する。1999年に起きた茨城県東海村のJCO臨界事故で亡くなった作業員はこのレベルを浴びた。1000ミリシーベルトを超えると確定的影響が問題になる。
一方の「確率的影響」は、被曝後、数年~数十年をかけて出るもので、大勢の人が放射線を浴びるとき一定の割合の人にがんなどを発症することをさす。
原発から離れた場所に住む人にとって問題になるのは、比較的少ない放射線を受けたときに生ずる、この確率的影響だ。
体の外から受ける放射線量が累積で10~50ミリシーベルトになりそうだと屋内退避、50ミリシーベルトを超えると予測されると、その地域にいる人に避難が指示される。
確率的影響も200ミリシーベルトより低い線量では発がんリスクが上がる証拠はない。「広島、長崎の被爆者でも(確率的影響による)発がんリスクの増加はない」(国立がん研究センターの祖父江友孝部長)
100ミリシーベルト以下になると喫煙など他の要因によるリスクと見分けが付かなくなる。
放射線を使う技師や医師、原子力発電所職員らは通常1年で最大50ミリシーベルト(5年間平均で20ミリシーベルト)まで放射線を受けても問題ないとされる。
この規制値は、急性で影響がでてくる1000ミリシーベルトまでには20倍、確率的な発がんリスクと比較しても2倍以上の余裕がとってある。
・平時も年1.5ミリシーベルト
一般人の被曝の限度は、さらに安全をみて年間1ミリシーベルト(自然放射線量を除く)。医師らは、放射線について知り線量計などで被曝を常に把握し管理している。無防備な一般の人はより低い水準にとどめる。
年間1ミリシーベルトは、急性の症状が出る千分の1以下。長期の発がんリスクが高まるかどうかを検証できないほどの水準だ。
理論上は、年間1ミリシーベルトを生まれたときから80歳までずっと浴び続けても、がんの発症リスクの上昇は0.5%以下と見積もられている。
実際には、放射線は日常的に宇宙から降り注ぎ、岩石に含まれる放射性物質からも出ている。日本人は平均年間1.5ミリシーベルトを浴びている。
規制値はそれを超えればすぐに危険という「安全と危険を区切る境界線」ではない。安全に十分な余裕がとってある。
にもかかわらず「ただちに」発言が出てくる背景には、低線量の放射線が人体に与える影響が確率的であるからだ。確率はどんなに低くても、全くないとはいえず、念のため「あると仮定して備える」という放射線防護のリスク管理の考え方が隠れている。
日本で公表されない気象庁の放射性物質拡散予測
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、気象庁が同原発から出た放射性物質の拡散予測を連日行っているにもかかわらず、政府が公開していないことが4日、明らかになった。
ドイツやノルウェーなど欧州の一部の国の気象機関は日本の気象庁などの観測データに基づいて独自に予測し、放射性物質が拡散する様子を連日、天気予報サイトで公開している。日本政府が公開しないことについて内外の専門家からは批判が上がっており、政府の原発事故に関する情報開示の在り方が改めて問われている。
気象庁の予測は、国際原子力機関(IAEA)の要請に基づくもの。国境を越える放射性物質汚染が心配されるときに、各国の気象機関が協力して拡散予測を行う。
同庁では、東日本大震災当日の3月11日から毎日1~2回、拡散予測を計算している。具体的には、IAEAから送られてきた放射性物質の放出開始時間や継続期間、どれくらいの高さまで上ったかを、風向きや天候など同庁の観測データを加えた上で、スーパーコンピューターに入力し、放射性物質の飛ぶ方向や広がりを予測している。
(2011年4月4日)
低濃度汚染水、海への投棄開始 福島第1原発で東電
官房長官「安全確保のため、やむを得ない」東京電力は4日、福島第1原子力発電所で国の排水基準の約100倍に相当する「低レベル放射性物質」を含む汚染水約1万1500トンの海への放出を始めたと発表した。タービン建屋の地下などにたまり海に流れ出ている「高レベル」汚染水に比べれば放射性物質の濃度は低い。低レベル汚染水を海に出し、空いた場所に高レベル汚染水を入れて浄化処理などを進める苦肉の策となる。
低レベルとはいえ、放射性物質で汚染された水を意図的に放出するのは国内初。福島第1原発の集中廃棄物処理施設と呼ばれる建屋内にたまっている廃液約1万トンと、既に冷温停止している5、6号機近くにある立て坑にたまった約1500トンの水を海に出す。4日午後7時すぎに開始、数日にわたって続ける計画。
東電は4日午後、「原子炉等規制法64条1項」に基づき、放出を経済産業省原子力安全・保安院に報告。保安院が国の原子力安全委員会の助言も受けて実施はやむを得ないと判断した。同項は汚染水によって災害発生の恐れがある際に、緊急措置として放水を認めるとしている。
枝野幸男官房長官は4日の記者会見で、汚染水の海への放出について「安全確保のためにやむを得ない」と述べた。「海水などのモニタリング結果を注意深く監視して環境への影響をしっかりと確認するよう指示した」という。原子力安全委の代谷誠治委員も、「低レベルの汚染水を出して高いものが放出されない枠組みができるのなら、致し方ない」と容認する考えを示した。
集中廃棄物処理施設の汚染水は原子炉の配管洗浄の際などに発生する廃液。放射性ヨウ素131の濃度は1立方センチメートル当たり6.3ベクレル。5、6号機の立て坑にたまった水は同1.6~20ベクレル。
現在ピット(立て坑)のひび割れから漏れ出ている汚染水に比べると、放射性物質の濃度は約100万分の1と低い。ただ国の排水基準はヨウ素131で同0.04ベクレルで、低レベル廃液でもこの基準の100倍以上になる。
東電は周辺の魚や海藻を毎日食べても、受ける放射線量は年間で約0.6ミリシーベルトと自然界から受ける量よりも少ないと説明している。ただ、既に高濃度の汚染水も大量に流出しており、低レベルでも量が増えれば漁業などへの影響を懸念する声も強まる可能性がある。(2011年4月4日)
積算放射線量「浪江、数週間で退避基準超えも」 安全委
原子力安全委員会は4日、福島県浪江町で放射線量の積算値が高まっていることについて、定例の記者会見で「現状レベルの放出が続けば、あと数週間のうちに退避区域となる基準を超える可能性がある」と指摘。その場合、政府に退避区域にすることを助言するとした。
屋内退避区域の基準は、住民が受ける放射線量が1万マイクロシーベルトを超えた場合。文部科学省の調査では、先月23日から今月3日までの放射線量の積算値が、屋内退避の30キロ圏をわずかに超える浪江町の観測点で1万340マイクロシーベルトとなった。この積算値は屋外に24時間いたときの値。住民が受ける放射線量は、この6割として計算され、現状では6千マイクロシーベルト程度となる。
原子力安全委は「現時点では屋内退避地域を変更するものではない」と判断。「放射性物質の放出が止まれば基準に達しないが、原子炉が安定しなければ、あと数週間で超える可能性がある」とした。推移を注視していく。(2011年4月4日)
放射性物質まき散らす日本 海外論調「同情」から「不信」
福島第1原子力発電所の事故処理が進展しない現状に、国際社会もいら立ってきた。放射性物質が大気や海水へ放出されたままで、有効な手を打てない日本政府の対応に不満を募らせる。
東日本大震災と津波で未曾有の被害を出した日本に同情的だった海外の論調も、原発対策の遅れとともに「日本は何をやっているのか」と風向きが変わりつつあるように見える。
「東電社員の死をすぐ発表しなかったのはなぜか」「日本の原発、数か月にわたって危険な放射性物質放出の可能性」
米ワシントンポスト電子版(WP)は2011年4月3日、このような記事を配信した。細野豪志首相補佐官がテレビ番組で、福島第1原発から放出される放射性物質を止めるのに数か月かかる目算を示したのを引き合いに出したのだ。記事の中では、当局が「数か月」と発表せざるをえなかったのは、「損傷した福島第1原発の修復が困難で、すでに4週目に入っている大規模な事故対策も見通しが立っていないことの証明だ」とした。
さらに同紙は、東京電力と日本政府が原発関連の情報を適切に開示しておらず、外部の有識者やメディア、世論から批判を浴びていると指摘、「記者の間では不信感が募っている」とした。4月3日に東電は、行方不明となっていた同社の社員2人が3月30日に4号機のタービン建屋地下で遺体となった発見されたことを明らかにした。
すると、3日夕方に開かれた海外メディア向けの記者会見で、記者から「東電社員の死をすぐ発表しなかったのはなぜか」「どうして東電の幹部は、社員が亡くなったことを公表した会見に同席しなかったのか」と質問が飛んだ。だが、政府の広報官からは満足な回答が返ってこなかったという。
高濃度の放射能汚染水が海に流れ出したことも、海外メディアの高い関心を集めた。2号機の取水口付近にあるピットの壁の亀裂から漏れ出したと見られるが、米CNNやウォールストリートジャーナル、英ガーディアンなど欧米の主要紙やテレビのニュースサイトがこぞって写真入りで紹介した。CNNの記事には1700件ほどのコメントが寄せられている。中には、
「日本(政府)が意地を張らずに、米国の専門家が『廃炉を決めて、原子炉にセメントを注入せよ』と助言したのを受け入れていたら、こんな大事にはならなかった」
と、日本に対するあからさまな批判も出始めている。
おがくずに新聞紙「効果あるわけない」英テレグラフ紙電子版は、4月4日付記事の見出しに「配管をふさぐために新聞とおがくずを使う」と掲げた。2号機から漏れ出した汚染水を止めるため、吸水性の高い「高分子ポリマー」と合わせておがくず、新聞紙も流し込んだことを伝える記事だが、おがくずや新聞紙を使ったのが奇異に映ったのか、読者からは「そんなものが効果あるわけないだろう」「髪の毛や金属の屑なんかも効くんじゃないか」と、揶揄するようなコメントが見られた。
米ブログメディアのハフィントンポスト(HP)も、この「おがくず作戦」について4月3日、トップページに大きく掲載。「毎日毎日、新たな問題が生まれる原発」で、漏水を防ぐために「おがくずと、大きなゴミ袋3つ分の細切れになった新聞紙、おむつにも使われている高分子ポリマー」を使ったものの失敗に終わった様子を報じた。
HPの別の記事では、リスクマネジメントの専門家が「日本政府は一刻も早い解決を」と強調。米国の原子力工学研究者による試算で、福島第1の事故で放出されたセシウム137の濃度が、チェルノブイリ原発の事故で検出された数値を上回ったとして、「試算が正しければ、フクシマは今や史上最悪の原発事故になっている」と警告。日本の当局が国際原子力機関(IAEA)や諸外国政府の支援を受けるのをためらえば「事態はさらに悪化する」と断言した。
なお東電は4日夜から、福島第1原発にたまっている放射性汚染水のうち、汚染レベルの低い水およそ1万トンについて、海への放出を始めた。(2011年4月4日)
原発30キロ圏外に高汚染地点 3カ月後も最大400倍
福島第一原発事故により土壌が汚染された影響で、原発から30キロ圏外の福島県飯舘村では爆発から3カ月後も、最高地点では平常時の約400倍の放射線が出続ける可能性のあることが、京都大や広島大などのチームによる現地調査で分かった。この3カ月間の放射線の積算量は、国が避難の目安として検討中の年間20ミリシーベルトを超える値だ。国などの測定でも、汚染は30キロ圏内外で確認されており、今回の調査で汚染地域が不規則に広がっている実態が改めて浮かび上がった。
今回の調査では、土壌に含まれる8種類の放射性物質の量を分析し、物質ごとの半減期を考慮して地表の放射線量の推移を求めた。2種類の物質しか公表していない文部科学省の調査より、実態に近い推計ができる。
京都大原子炉実験所の今中哲二助教(原子力工学)や広島大の遠藤暁准教授(放射線物理学)らは3月下旬に飯舘村を訪問。村内5カ所で深さ5センチの土を採取し、セシウム137などの濃度を分析した。調査地点は全て30キロ圏外で、道路沿いの集落を選んだ。
この結果、1平方メートルあたりセシウム137が約219万~59万ベクレルの高い濃度で確認された。1986年のチェルノブイリ原発事故の際は、セシウム137が55万5千ベクレルを超えた地域は「強制移住」の対象となった。飯舘村の最高の数値は4倍にあたる。
再び大量の放射性物質が放出された場合は、さらに上がりかねない。
また原発で爆発が起きた3月15日を基点に、地表1メートル地点の大気中の放射線量が3カ月後にどう変化するかを試算した。その結果、3カ月後でも毎時21~7マイクロシーベルトの放射線が土壌から大気中に出ることがわかった。3カ月間、屋外にいたとして単純計算すると、放射線の積算量は、約95~30ミリシーベルトに上る。
また土壌に付着したセシウムがそのまま残ると仮定すると、1年後の積算量は約220~70ミリシーベルトに上る可能性があった。
国は住民への避難指示の根拠として、年間の積算量20ミリシーベルトを目安とする基準を検討している。
半減期が30年のセシウム137も雨風などの影響で移動、流出して、1年後の数値は今回の試算値より下がる可能性はある。
文部科学省のモニタリング調査などによると、放射能による大地への汚染は爆発時の風向きなどにより、同心円状ではなく不規則に広がっている。文科省の土壌調査によると、土1キロあたりに含まれるセシウム137の濃度は、飯舘村のほか、原発から30キロ圏内外の大熊町や浪江町などでも、面積あたりに換算すると、最高値では京大などの調査より高い値になっている。
原子力安全委員会の緊急時迅速放射能影響予測(SPEEDI)でも、原発から放射性ヨウ素が飛散する地域は、原発から北西と南の方向へ広がっている。
米エネルギー省も17~19日に毎時125マイクロシーベルトを超える放射線量の大気の帯が、浪江町や飯舘村付近を通ったと推定。高いレベルの放射性物質は、まだら状に降り注いでいる可能性を示している。(2011年4月8日)
『ずっとウソだった』
この国を歩けば、原発が54基
教科書もCMも言ってたよ、安全です。俺たちを騙して、言い訳は「想定外」
懐かしいあの空、くすぐったい黒い雨。ずっとウソだったんだぜ
やっぱ、ばれてしまったな
ホント、ウソだったんだぜ
原子力は安全です。ずっとウソだったんだぜ
ほうれん草食いてえな
ホント、ウソだったんだぜ
気づいてたろ、この事態。風に舞う放射能はもう止められない
何人が被爆すれば気がついてくれるの?
この国の政府。この街を離れて、うまい水見つけたかい?
教えてよ!
やっぱいいや…もうどこも逃げ場はない。
ずっとクソだったんだぜ
東電も、北電も、中電も、九電も
もう夢ばかり見てないけど、ずっと、クソだったんだぜ
それでも続ける気だホント、クソだったんだぜ
何かがしたいこの気持ちずっと、ウソだったんだぜ
ホント、クソだったんだぜ
福島原発事故、最悪「レベル7」 チェルノブイリ級に
福島第一原発の事故について、経済産業省原子力安全・保安院と原子力安全委員会は、これまでに放出された放射性物質が大量かつ広範にわたるとして、国際的な事故評価尺度(INES)で「深刻な事故」とされるレベル7に引き上げた。原子力史上最悪の1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故に匹敵する。放射性物質の外部への放出量は1けた小さいという。12日午前に発表した。
保安院は3月11日の事故直後、暫定評価でレベル4としていた。放射性物質が原子力施設外に放出されるような事故はレベル4になり、それ以上は、外部に放出された放射性物質の量でレベルが決まってくる。
18日に79年の米スリーマイル島原発事故に匹敵するレベル5に引き上げた。レベル5は放射性ヨウ素に換算して数百~数千テラベクレル(テラは1兆倍)の放出が基準だ。その後、放出された放射性物質の総量を推定したところ、放射性ヨウ素換算で37万~63万テラベクレルになった。INESの評価のレベル7にあたる数万テラベクレル以上に相当した。福島第一原発では今でも外部への放出は続いている。
チェルノブイリ事故では爆発と火災が長引き、放射性物質が広範囲に広がり世界的な汚染につながった。実際の放出量は520万テラベクレルとされている。福島第一原発の事故での放出量はその1割程度だが重大な外部放出と評価した。評価結果は国際原子力機関(IAEA)に報告した。
福島第一原発では、原子炉格納容器の圧力を逃がすため放射性物質を含む水蒸気を大気中に放出した。さらに地震後に冷却水が失われ核燃料が露出して生じたとみられる水素によって、1、3号機では原子炉建屋が爆発して壊れた。
2号機の格納容器につながる圧力抑制室付近でも爆発が起こったほか、4号機の使用済み燃料貯蔵プールでの火災などが原因で放射性物質が大量に放出されたと見られている。内閣府の広瀬研吉参与(原子力安全委担当)は「3月15~16日に2号機の爆発で相当量の放出があった。現段階は少なくなっていると思う」と話した。
東京電力原子力・立地本部の松本純一本部長代理は会見で「放出は現在も完全に止まっておらず、放出量がチェルノブイリに迫ったり超えたりする懸念もあると考えている」と話した。
ただ、原発周辺や敷地の放射線量の測定結果は3月15~21日に非常に高い値を示していたものの、その後低下している。4月10日に非公開で開かれた安全委の臨時会で保安院の黒木慎一審議官は「最悪の事態は今は脱した」と報告している。(2011年4月12日)
飯舘の水田、検出セシウム増 村全域で作付け見送り決定
福島県飯舘村の水田から、コメの作付け基準の6倍近い、土壌1キロあたり約2万9千ベクレルの放射性セシウムが検出された。県の土壌調査で判明し、12日に発表した。飯舘村は、6日に県が公表した1回目の調査結果で基準の3倍だった。
今回調査したのは県内の54地点。1回目に高い数値が出て再調査になった7市町村が主な対象で、飯舘村は前回の2地点から8地点に拡大した。前回最高の1万5千ベクレルだった同村長泥は今回、2万9千ベクレルと大幅に増えた。
前回は調べられなかった福島第一原発から半径30キロ以内の4町村も、今回は対象になった。このうち浪江町でも約2万9千ベクレルのセシウムが検出された。
国は、土壌1キログラムあたり5千ベクレル超の場合、コメの作付けを制限する基準を示している。この基準をあてはめると飯舘村と浪江町は作付けが難しくなる。農林水産省は近く、調査がほとんどできていない原発から半径30キロ圏内や、「計画的避難区域」に指定された川俣町も含め、福島県内の稲の作付け制限地域を決める。
県は12日、これらの地域を除いた県内全域で、稲の作付けが可能との考えを示した。畑や果樹園の土壌も現在調べており、近く結果を発表するという。
2回の調査ともに数値が高かった飯舘村は12日、今年はすべての農作物の作付けを見送ると決めた。村全域が計画的避難区域に指定されることになり、コメ以外も含め、農作業が実質的に不可能になると判断した。(2011年4月13日)
安全委がレベル7の可能性認識 危険性認識も見直し求めず
原子力安全委員会の代谷誠治委員は12日、経済産業省原子力安全・保安院が福島第1原発事故の深刻度を国際評価尺度(INES)の暫定評価で「レベル7」としたことについて、3月23日の時点でレベル7に相当する危険性があると認識していたが、これまでに暫定評価の見直しを保安院に求めなかったことを明らかにした。
代谷委員は記者会見で「尺度評価は保安院の役割だ。(安全委が評価見直しを)勧告しなければならないとは考えない」とし、原子力安全委は関与しないとの姿勢を強調。事故から1カ月経過してレベル7としたことも「遅くなったとは思わない。われわれの事故への対応は変わらない」と述べ「レベル7への格上げが遅れたのではないか」との批判に反論した。
3月23日には、放射性物質の放出量がレベル7の基準である数万テラベクレルを超える10万テラベクレルに達する可能性を認識していたという。早期にレベル7として市民に注意を促す必要性について代谷委員は「いろいろな考え方がある」と述べるにとどめた。
原子力安全委は、ヨウ素換算で63万テラベクレル(テラは1兆)の放射性物質が放出されたと推定。4月5日ごろには同程度の値を推定していたが「より精度を上げたかった」として公表を見送っていたという。
飯館村「人が住めるレベルではない」 京大助教らが現地調査
(04/14 06:55)
福島第1原発事故による放射能汚染を独自に調査した京大原子炉実験所の今中哲二助教らによる報告会が13日、国会内で開かれた。今中氏は、同原発から北西に25~45キロに位置する飯館村の一部について「人が住むのに適したレベルではない」と指摘、汚染の深刻な状況を訴えた。
今中氏は、3月28、29の両日、飯館村の130地点で空気中や土壌で放射線量を測定。原発から遠い同村北部の空気中の放射線量は1時間当たり3~4マイクロシーベルトだったのに対し、原発に近い南部に行くと20マイクロシーベルト程度に上がったことを説明した。
同村曲田地区の土壌からはセシウム137を1平方メートル当たり2200キロベクレル検出し、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故による強制移住基準1480キロベクレルを超えた。
3カ月居続けた積算被ばく量は100ミリシーベルトに達するといい、「原子力安全委員会の防災指針で『避難』とされる50ミリシーベルトを超える」と危険性を述べた。
また、専門家の多くが「直ちに健康に影響はない」と安全性を強調していることについて「直ちに影響がないのは急性障害で、問題なのは(障害が後年に出る)晩発性のがん、白血病、遺伝的影響だ」と批判した。
報告会は、国際環境非政府組織(NGO)の「FoE Japan」などが主催した。
放射性物質放出量、炉内の1~2% 保安院が推定値公表
経済産業省原子力安全・保安院は14日、福島第一原発1~3号機から事故で大気中に放出された放射性物質は、炉内にあった量の1~2%という推定値を公表した。多くの放射性物質がまだ原子炉内に残っていることになる。
推定値は主な放射性物質としてヨウ素とセシウムを分析したもので、ヨウ素131が約2%、セシウム137が約1%だった。12日に今回の事故の国際的な事故評価尺度(INES)を旧ソ連チェルノブイリ原発事故と同じ「レベル7」(深刻な事故)に引き上げる根拠になった。当初、放出量だけしか公表しなかった。
保安院によると、事故前に1~3号機の炉内にあった放射性物質は、ヨウ素131が610万テラベクレル(テラは1兆、ベクレルは放射能の単位)、セシウム137は71万テラベクレルだったという。
1~3号機では原子炉圧力容器や格納容器につながる配管や弁などのすき間や、破損した部分から放射性物質が外部に漏れ出たとみられている。地震後間もなく、炉内の蒸気を外に逃がして圧力を下げるベント(排気)作業でも放出された。
セシウム137の放射能が半分になる時間(半減期)は約30年だが、ヨウ素131は8日と短く、当初よりも相当減っていると見られている。
日本原子力学会の調査専門委員会が14日に発表した分析では、1~3号機の炉内の核燃料は、一部がいったん溶けたうえで冷えて固まり、圧力容器の底に数ミリほどの粒子になって積もっているという。(2011年4月15日)
福島第1原発:放射線抑制6~9カ月 年内避難解除困難に
東京電力は17日、勝俣恒久会長が記者会見で福島第1原発1~4号機の収束工程表を発表し、原子炉内の水が100度以下で安定する「冷温停止」になるまで「6~9カ月かかる」との見通しを明らかにした。東電の発表を受けて海江田万里経済産業相が17日、会見した。避難区域の住民の帰宅可能時期について、「6カ月から9カ月後を目標に、一部の地域の人にお知らせできるようにしたい」と述べた。しかし、冷温停止後も汚染状態の分析などに時間が必要で、年内の帰宅は事実上、難しくなっている。
工程表で東電は、原子炉冷却や放射性物質の拡散防止など、63項目の具体策を示した。3カ月以内に「放射線量を着実に減少させる」、6~9カ月以内に「放射線量を大幅に抑える」とした。しかし、燃料取り出しや解体など、中長期的な見通しは示していない。
東電は今後3カ月を「ステップ1」、その後3~6カ月を「ステップ2」とし、(1)原子炉冷却(2)燃料プールの冷却(3)汚染水対策(4)大気・土壌での放射性物質抑制(5)避難地域での放射線量低減--の課題別に対策を公表した。
原子炉冷却では、ステップ1で原子炉圧力容器の外側の格納容器まで大量の水を注入して燃料の温度上昇を抑制。さらに炉内の水を循環させながら冷却するため、外部に熱交換器を設置することも検討する。1号機で行っている格納容器への窒素注入を2、3号機に拡大し、水素爆発の危険性を回避。格納容器が損傷しているとみられる2号機では、補修工事も行う。これらの対策をステップ2まで継続し、原子炉の冷温停止を目指すという。
燃料プールは、コンクリート圧送車での放水を続ける一方、プールを支える建屋の壁が損傷した4号機について、ステップ1で補強工事を行う。放射性物質の拡散抑制対策では、ステップ2までに原子炉建屋全体を覆う布製カバーの設置を終え、壊れた屋根や外壁をコンクリートなどで覆う本格的措置の詳細設計に入る。
ただ、現状では高い放射線に阻まれ、機器や配管の損傷程度すら正確に把握できていない。強い余震による作業の中断も予想される。勝俣会長は、スケジュール通り進むかどうか、不確定な要素も多いことを認めた。
海江田経産相は、一部地域の住民が帰宅可能かどうかを判断する時期について、「ステップ1では難しい。(原子炉が冷温停止状態になるなどの)ステップ2だ。ステップ2の終了時に内閣府原子力安全委員会の意見を聞いた上で、可能な限り広範囲の放射性物質の除去に取り組む」と述べた。しかし、「一部の地域」の範囲や、それ以外の地域については明言しなかった。また、政府として「原子力安全・保安院で、例えば1カ月間隔を目安に(進捗=しんちょく=状況を)確認していく」と語った。【平野光芳、藤野基文、関東晋慈】
– 福島第1原発事故収束に向けた工程表 –
ステップ1(放射線量が着実に減少傾向となっている)=3カ月程度
具体策
・圧力容器に窒素ガスを注入
・燃料上部まで格納容器を水で満たす
・汚染水の保管、処理施設の設置
・原子炉の熱交換機能の検討・実施
◇ステップ2(放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている)=ステップ1終了後3~6カ月程度
具体策
・使用済み核燃料プールへの注水の遠隔操作
・汚染水の処理、再利用
・原子炉建屋全体を覆うカバーの設置
・避難指示、計画的避難、緊急時避難準備区域などで除染
(2011年4月17日)
東電サイト「最大級の津波を想定」…事故1カ月後に削除
写真:削除された津波対策を紹介していたページ。「様々な安全対策を講じています」などと記載されていた=東電のホームページから拡大削除された津波対策を紹介していたページ。「様々な安全対策を講じています」などと記載されていた=東電のホームページから
東京電力が福島第一原発の事故を受け、自社のホームページ(HP)から「想定される最大級の津波を評価し、重要施設の安全性を確認しています」などと紹介した津波対策の記載を、事故後1カ月以上たった後に削除していたことが分かった。東電は「従来の対策を掲載し続けることはおかしい、と(閲覧者から)おしかりを受けたため削除した」と説明している。
東電によると、13日にHPを一新した際、津波対策のページを削除した。事故の後も、HPに「考えられる最大の地震も考慮して設計しています」などという対策が載り続けていることに対し、閲覧者から非難の声が寄せられたという。
そのページには、津波対策として「敷地周辺で過去に発生した津波の記録を十分調査するとともに、過去最大の津波を上回る、地震学的に想定される最大級の津波を数値シミュレーションにより評価し、重要施設の安全性を確認しています」と記載。イラスト付きで「発電所敷地の高さに余裕を持たせるなどの様々な安全対策を講じています」としていた。(2011年4月19日)