「もうひとつの国へ」 森山大道

本の話

東川町国際写真フェスティバルイベントに参加ということで、写真関係の本を見直したり、美術館へ行ったりとにわか勉強。新しい本を買って読もうと思ったけれども、あまり時間がなかったので断念。今日は写真甲子園のファイナルだけれども、公開審査は見に行けないので明日写真展を見てみようと思う。

写真関係の本を読み直すといっても、結局多木浩二・森山大道・中平卓馬という「なぜいまだprovokeなのか」のひとたちばかり。森山さんの「もうひとつの国へ」は、写真とはあまり関係ない文章を集めたもの。森山さんの彼女の話や奥さんとの関係の文章は結構面白い。「もうひとつの国へ」は写真集「新宿」、「ハワイ」、「ブエノスアイレス」が出版された時期の文章が多い。「新宿」の話が多いのは、森山さんらしいと言えばらしい。「ハワイ」や「ブエノスアイレス」の写真集でも新宿で撮ったのではと思えるようなカットがあるので、森山さんの場合場所性は関係ないのかもしれない。

 街角では舗道がクロスしていて、橋では川がクロスしている。そして踏切では線路と路とがクロスしている。そしてそれらの上では終日人々もクロスしていて、時間と空間、光と影、生と死とがきりなくクロスしつづけている。僕は路上を撮り歩くカメラマンだから、しじゅうそんな場所に向けてシャッターを切っている。なかでも踏切や橋の在る空間は僕がもっとも好きな風景だから、必ずといっていいぐらい写す。そこではいつだって、木や鉄や、石や、陽や、水の匂いが立ちこめていて、オーバーではなく、僕に、人間について生について時間について、その他もっと多くの事柄について語りかけてくる。そして僕も、それら目に映る外界の断片を写し撮り、焼き露すことで、ふたたびそれら風景に対して新たなる問いかけをくりかえし、その循環の過程から、自身について、写真について、ときに世界について、さらなる発見と認識を目論んでいるのだ。

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